幸せの帳
「幸せの帳」
さっき
ミーとのLINEのやり取りの中で
今日はまだ言ってない
と言ったけど
LINEを少し遡ったら
言っていないと言っていた
愛してるよの言葉が
いくつも並んでいた
ミー
俺はもうダメなんだ
どれだけ愛してるよって
言っても
その言葉が足りなくて
足りなくて
仕方がなくなってるんだ
今日の俺は
というよりも
今日もまた
俺はミーのことばかり考えていた
昨日の起きた出来事や
その時々の
どんな場面でも綺麗だった
ミーの姿を
この胸に浮かべては
焦がしていた
ミー
栄の街の華やぐ中で
俺は
ミーの髪の毛に
はじめて触れたよね
もうそれだけで
心臓の音は早くなってしまったから
ミーの手を繋ぐことに
あんなにも戸惑ってしまった
パンプスを履いたなら
ミーの足首は
どこまでも艶やかで
そこからは
女の色気が漂っていた
食べ物を口に運ぶしぐさも
ワイングラスを持つ時の
そのしぐさも
そのひとつひとつが
いちいち可愛くて
俺はその度に
言葉が出なくなりそうに
なっていたんだよ
豊橋へと向かう道の途中で
ミーは俺に甘えてきた
俺はやっぱり
栄の街にいた時と同じように
ミーの髪の毛と
手を繋ぐことしかできなかったけど
今度は街の灯りが滲んできていた
それは
悲しかったからじゃない
胸の中で凍っていた
冷たい固まりが
溶けだしていたから
ミー
たまらなくなってきた
言葉が浮かばない
だけど続けるね
段ボール箱に
絵を書いたような
電車を走らせる
そのレールも駅も
あの時は静かに眠っていた
俺はまた
ミーとの二人だけの世界に
入り込みたくなった
深夜に働いている
コンビニの店員も
信号の青赤も全部止まらせて
二人だけは動いて
その唇にキスしたくなった
ミーのことは
こんなにも想っているから
愛してるの言葉なんて
いくらでも言える
でもそれ以上の何かを
ミーにぶつけたくなった
俺は
その想いのままに
ミーの唇を塞いだ
ミーの頬を包み
見つめた瞳の色を
俺は生涯忘れない
小さな顔も
首筋から匂ってきた
甘い香りも
俺は生涯忘れない
ミー
ミー
ミー
ミー
帰したくなかった
朝陽が昇るまで
一緒にいて
ミーの温もりを
感じていたかった
帰り間際に
抱きしめたあの強さで
ミーを粉々にして
それを俺が拾い集めて
ミーのことを
自分のものだけにしたかった
ミーがいなくなって
助手席が
なんだかとても頼りなくて
夜の国道の風景は
やっぱりどこまでも寂しくて
ミーが優しく噛んでくれた
こんなにも汚れてる
自分の指や
手の甲の浮かんだ血管の上を
ミーは撫でてくれたから
俺はそこにくちづけた
そんなことをしていたら
俺はまた
洪水のように
ミーへの想いが
溢れては流れ出して
もうなんにも
手が負えなくなってきて
このまま引き返して
シャワーを浴びたばかりの
ミーの洗い立ての匂いを嗅いで
ミーのことを
クチャクチャにしたくなっていた
優しさも
思いやりも
それから
理解といったものも
全部全部
忘れて
ミーのことを欲しがっている
自分がいた
それは今日も続いていて
狭い窓から見える
冬の空を眺めては
俺は今
ぼんやりとしている
そのぼんやりの中には
激しい寂しさと嫉妬がある
誰よりも
ミーのことを愛しているから
ミーが誰かと一緒にいる
俺はそれを責めないし
また責めることでもない
ミーは
俺の宝物だから
誰よりも幸せにならければいけない
だけど
ミー
ミーの笑顔を
誰にも見せたくない
ミー
ミー
俺はそんな自分になれて
嬉しいんだよ
ミーが
俺の右手の人差し指を
優しく噛んだ
その瞬間に
幸せの帳が開いた
日曜日の午後を
俺はこれからも寂しく過ごす
俺はその寂しさを
失いたくない
その意味を
わかってもらえたら嬉しい
ミーが
ほら今
パンプスを履くために
片足を少しあげた
ミー
愛してるよ
いつまでもいつまでも
愛してるよ
ミーの足の方が
全然綺麗だね(#^.^#)
12月18日(日)18時58分