ミーがくれたクリスマスプレゼント
ミーのことを想う度に
心だけではなく
体まで欲しくなってくるから
なぁ
ミー
男には
それを外に出さないといけない
どうしようもないものがあるね
そんないけない夢を
一人胸に抱きながら
俺は何時間も
夢に近い意識の中で
ミーに触れていた
ミーはその度に
切なく感じてくれるから
そんなミーを
ずっと見ていたくて
俺は何度も何度も我慢をして
果ててしまうことに無理をした
そう
ミーからのLINEにも
気づかないくらいに
長い間そうしていた
そんな動作を幾重にも
繰り返し繰り返し
そのうち
この体はもっと熱くなっていったから
それはさながら
蝉の鳴き声が止まらない
うだるような真夏の中で
ミー
ミーって
その名前を呼びながら
俺はその時を迎えた
それはきっと
生命の始まりだから
果てた後
俺はなんだか
ミーの娘の顔を見たくなって
ミーのことを撫でるのと
同じ力で
ミーの娘の髪の毛を撫でた
ミー
気だるいよ
だから俺は
こんなにも幸せで
優しい気持ちになっているから
片方の腕に
ミーの顔を
うなじ辺りから乗っけて
そしたら
もう一方の腕は
遊んでしまうから
そのもう一方は
柔らかい乳房に触れながら
後は
ミーの目に甘えた
なぁミー
あれは忘れもしない
小学6年の
ちょうど今日の日のことだった
当時 俺が住んでいた所の区役所では
小学生を対象にした
クリスマスパーティーがあり
クラスメイトのほとんどは
プレゼント交換をするための
プレゼントを持って
そこに出かけた
俺も人並みに
そこに行きたかったんだけど
何も出来ない親は
俺が何度もねだった
クリスマスプレゼントを買えずに
だけど
どうしても
そこに行きたかった俺は
勇気をふりしぼって
その会場の入口へと向かった
ようやくの思いで
そこに辿り着くと
会場の前には受付があって
俺はそこにいたおばさんに
こう言われた
僕、プレゼントは
持ってきた?
プレゼントは
持ってきてません
ごめんね僕
プレゼントを
持ってきていない人は
ここには入れないのよと
とても優しい笑顔で
そう言われた
そう言われて
恥ずかしくなった俺は
今度は来たときの
何倍もの速さで
そこを駆け出して逃げた
後は
今にして思えば
狭い学区の中をあてもなく歩き
道の真ん中にぽつりとあった
石ころを見て
そっか
おまえも一人なんだね
俺が友達の所に
今から連れていってやるからと
そう言って
その石を
蹴飛ばしながら
石がいっぱいあった
公園へと連れて行ってやった
目的のその場所に着くと
俺は
じゃあなっと言って
連れてきたその石を
たくさんの石がある
その場所へと蹴ってやった
石は転がりながら
そこに向かい
同じような石に紛れた
その石は
もうどれがどれだか
わからなくなってしまった
俺はまた一人になった
でもそれで良かった
だって
道の真ん中でぽつんとしていた石は
ああして仲間の元へと
戻っていったのだから
ふと空を見上げると
静かに雲が
東の方角で流れてた
おもちゃ屋の前を通ると
お店のスピーカーからは
ジングルベルの曲が
賑やかに流れてた
プレゼントを親に買ってもらい
それを手にした子供を
何人も見送っているうちに
俺は悲しみが込み上げてきた
その悲しみは
悔しさにも似ていた
でもそんな悲しみよりも
自分はなんで
こんな風にしか
生まれて来れなかったんだろうって
考えていた
だから今でも俺は
ジングルベルの曲が
流れてくると
悲しい気持ちになってくる
それから何年もした後
俺はまたクリスマスパーティーの会場に
向かっていた
でも
今度は一人じゃない
そこにはバイト仲間の人達が大勢いて
その中には
一ヶ月くらい前に告白した
ひとつ年上の
憧れの圭ちゃんもいたから
パーティーの途中で
圭ちゃんは
俺にこう言ってきた
あなたの気持ち
とても嬉しいよって
あなたがもう少し
大人になったら
私達
手を繋いで歩いているのかもしれないね
って
今にして思えば
その言葉は
圭ちゃんの優しさだったのだと思う
その出来事は
パーティーが終わった
少し後の時刻に起きた
パーティーの会場にしていたお店から
3つ折れ曲がった路地に
ふたつの影はあった
電信柱に隠れていたけど
逆に
電信柱の街灯で
ふたつの影は伸びていた
恋愛映画のポスターのような
デザインで
その影は伸びていた
吐く息の俺は
ひとつで
影のそれは
ふたつに重なっていた
冬の真夜中の漆黒に
吐く息は
一段と白さというものを
際立たせていた
ふたつの影のひとつは
圭ちゃんで
もうひとつの影の正体は
いつも圭ちゃんのことで
話を聞いてもらっていた先輩だった
圭ちゃんは顎を上げ
顔は斜め上の傾きなのに
空なんか
なんにも見ていなくて
目を閉じて
先輩のくちびるで
いいようにされていた
俺はまたその時
小六の時と
同じようなことを思っていた
俺は
打ちのめされるために
生まれてきたのかって
それから
もうそんなことさえも
すっかりと忘れていた
10年前の
クリスマスのイブの二日前
名古屋の街は
大雪に見舞われた
俺は鬱がひどくて
三日三晩寝続けた後で
その景色を見た
働いていなかったから
ケーキを買えるお金なんて
持っているはずもなく
ミスドに行き
俺はひとつだけドーナツを買った
ミー
俺はまたその時に
思ってたんだ
俺はなんで
生まれてきたんだろうって
そして今度ばかりは
死んでしまいたいって
思ったんだ
でも
今ならそのわけが分かる
俺は
ミーに出会いたくて
ずっと生きてきたんだ
ミーは今年
最高のプレゼントを
俺にくれた
靴を選んで履いた時の
ミーの脚の美しさや
なによりも
ミーは
俺の指先を噛んでくれた
なぁミー
きっと
そのために
俺は生まれてきたんだろう
もしも今日
ミーと一緒にいることが
出来たなのなら
シーツの上で
ミーに腕枕をして
そんな話をしていたのかもしれないね
ミーのことを包みながら
そんな話をしながら
何度もミーの胸の中で
泣いていたのかもしれないね
生きてきて良かった
だって
ミーに指を噛んでもらえた
だから
生きてきて良かった
ミー
雪の結晶のように
綺麗だよ
ありがとう
愛してる
206年12月24日(土)07時40分