Sugar
「Sugar」
窓の外からは
午前中から降りだした雨の音が
鳴り止まずに聞こえているよ
ミー
ミーはいま何処にいて
何をしているのだろう
笑っているのかな
それとも
普通の顔をしているのかな
どんな表情のミーでもいいから
俺はミーの顔を見ていたいよ
ミーはとても綺麗
ミーの全てがとても綺麗
誘われないと
人に会うために
出掛けることのない俺だから
今日は一日
家の中で過ごしたよ
みんな
きっと楽しい時間を過ごして
いるのだと思う
みんな
俺には
何かあった時にしか
連絡してこないから
俺は
そんなの慣れてるし
全然平気なんだけど
ミーが今いないことに
少しだけひねくれてしまって
いるんだよ
ミー
この前会った時に
ミーは俺に言ったね
ミーが娘といる時に
連絡がないことを
寂しいって言ったら
あなたにも子供がいるし
私にもいる
だからあなたが子供といる時は
連絡がなくても寂しくないよって
俺はなんだか
その言葉が寂しかったんだ
わかるけど
自分がいないと寂しいって
言って欲しかったんだ
ものわかりのいい
ミーなんて
ちっとも面白くない
もっと女になって
もっとわがまま言ってくれたらいいのに
って
それ
俺の勝手な思い込みなんだよね
それはともかく
ミー
ミーと会ったのは
まだ四日前の夜だったよね
こうしてずっと
ミーから何の連絡もないと
ミーの体をきつく抱きしめたことも
ミーと腫れ合うほどのキスをしたことも
その全部が
幻だったように思えてくるよ
ミーから
もうずっと
連絡がないような気がしてきて
ならば
いっそのこと
このままどこか遠くの街に行き
消息を絶ってしまおうかなって
自分のことを誰も知らない
自分も誰のことをも知らない
そんな街で一人暮らせば
きっと
誰かに
嫌な気持ちにさせてしまうことを
言わなくても済むし
誰もいないから
自分も寂しい思いをしなくて済む
そんなことを考えながら
理由もなく
俺は瞼を閉じる
雨の音は
さっきより
一段と激しくなったみたいだ
ミーの白くて長い綺麗な指が
俺の髪をくちゃくちゃにしていく
ミーの美しさを
何も壊さないようにと
そっと触れたはずの
くちびるだったのに
いつしか
ミーに舌を絡められ
俺は止められなくなった
ミーのくちびるを
ほどけなくなった
ふとミーの瞳を見つめたなら
あまりにも綺麗で
俺は吸い込まれそうになって
妖しく光る
その輝きの向こうへと
俺は溶けていきたくなった
二人で与えあった温もりならば
永遠に忘れない
そんな甘い夜は
幻想的な月を連れてきて
二人にそれを見せたね
ミー
俺は今
こんなにも満たされているのに
寂しくて仕方がないよ
ミー
ミーはまるで砂糖だね
その身と心を甘く匂わせながら
そこに俺を誘い
もう二度と這い上がってこれない
甘くいくせに痛くて
苦しい
そんな世界に落とさせる
ミー
会いたくて会いたくて
仕方がないよ
ミーの美しさを
写真を撮るような正確さで
書きたかったのに
俺の拙い文は
それをボケさせる
ミー
胸が熱くなってきた
何故かわからないけど
涙がこぼれてきた
ある日突然俺がいなくなったら
その時は
どこかの知らない街で
元気に過ごしているのだと
思ってくれたらいい
永遠にミーと
一緒にいたいのにね
そんなことを思ってしまう
自分がいるんだ
狂おしいほど
愛してる
2017年1月8日(日)20時13分