恋なんて知らなかった
「恋なんて知らなかった」
日付が変わり
窓の外には
高速道路の灯りしか
見えなくて
もうこんな時間なのに
ミーはどこで誰と会い
どんな服装をして
どんな笑顔で
誰と話しているのかと
思ったら
いけない妄想が
胸の中で膨らみ出しては
暴れだした
俺はそんな自分を
どうすることも出来なくて
内にあるざわめきとは裏腹に
また窓の外を
わけもなく見て
ただただ無口なままで
さっきとは
何も変わってない
高速の灯りに
再び目をやった
もう何十年も生きてきて
数えきれないくらいの
辛い経験もしてきたはずなのに
今の俺には
こんなことしか出来なくて
ミーのことばかりを考えてる
ミー
俺はおまえのことばかりを考えて
ミーが家に帰ってくるのを
こうして待っているのに
なぁミー
おまえはなんだよって
人の気もしらないで
なんだよって
思ってしまっている
俺はミーのことを
束縛したいわけでも
なんでもないのに
そんなことを
ミーに言いたくなって
しまうよ
もうミーとのことなんて
どうでもいいから
このまま眠ってしまおうか
朝が来るまで
ミーのことなんて
考えなくて
夢さえも見なくて
そしたらきっと
何も考えずに済むからって
そんなことを思いながら
俺は今
3本目の酎ハイのタブを
いつもより強めの力で
思いっきり開けた
指が痛い
ミー
指が痛い
だから
あの夜の時と同じように
優しく噛んでおくれよ
あぁ そうだよ
ミー
広い駐車場のあった
コンビニの片隅で
ミーにそうしてもらったことは
この人生の中で
いちばん美しい思い出なんだよ
なぁミー
今までいろんな女を
愛してきたはずなのに
女のことなんて
知り尽くしているはずなのに
俺
ミーのことになると
何もわからなくなってしまうんだ
不安や
嫉妬や
恐れや
そんなもので
いっぱいになってきて
頭がおかしくなってくる
ミー
愛なんておもちゃ
俺はいくらでも
誰にでもあげてきたよ
そんなの
自分の中にいくらでもある
でも
ミー
俺はきっと
恋なんて知らなかった
こんなにもこんなにも
切なくて
こんなにもこんなにも
激しくて
こんなにもこんなにも
甘くて甘くて
俺
ミーと出会って
初めて
恋というものを知ったみたい
ミー
なんだか
泣きたくなってる
誰にも渡したくない
新しい色を入れたばかりの
ミーの髪の毛をかきあげ
白く光るそのうなじに
この唇を這わせたい
その場所に
永遠に消えることのない
キスマークをつけたい
ミー
愛なんかよりも
重たい気持ちで
ミーに恋してる
2016年12月30日(金)01時28分